アリの種類とアリの特性

アリ退治/家のアリ駆除方法>アリの種類とアリの特徴
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 アリには、たくさんの種類(しゅるい)があります。好きな食物は、それぞれちがいます。甘(あま)いものは、働(はたら)いているアリの力を出すエネルギーとして、虫の体のタンパク質は、アリの体をつくる材料として、どの種類のアリにも大切な食物です。

 幼虫を育てるためには、虫の体のタンパク質が必要だ。小さい虫は、大あごでくわえてくる。大きい虫は、引きずってきたり、小さい肉のかけらにして、巣(す)まで運んでくる。

 アリは、甘いもののにおいに敏感(びんかん)だ。虫の体液や花の蜜(みつ)や、砂糖(さとう)は、素嚢(そのう*)に吸(す)いこんで運ぶ。お菓子(かし)などは、だ液(えき)でとかしたり、かじりとって、巣(す)まで運んでくる。

 アリは、2つの胃をもっている。前の方は、素嚢(そのう)と言って、仲間(なかま)のアリのために蜜(みつ)をためるふくろだ。素嚢の後ろに弁(べん)があり、そこから本当の自分の胃がつづいている。
 大きな餌(えさ)を見つけると、巣(す)に戻(もど)って仲間の働(はたら)きアリを呼(よ)んでくる。帰るときに、臭(にお)いの道しるべをつけていくので、まちがえずに、餌場(えさば)にもどってこられる。大あごでコオロギの死がいに食いついて、後ずさりしながら運ぶ。巣(す)の方に、たくさんのアリが集まるので、最後には餌(えさ)は巣に引きずられていく。

 アリは、甘(あま)い液体の餌(えさ)は、素嚢(そのう)に吸(す)いこんで運びます。素嚢がふくらむと、腹板(ふくばん)の間の膜(まく)がのびて、 しまもようの大きな腹(はら)になります。巣(す)にもどって仲間(なかま)に餌を分けてやると、素嚢がからになるので、また外へとび出します。
 アブラムシやカイガラムシは、木の汁(しる)を吸(す)い、養分をとった残(のこ)りの甘(あま)い蜜を腹部(ふくぶ)の先から出す。アリは、アブラムシやカイガラムシの腹部の先を、触角(しょっかく)でトントンとたたいて、甘い蜜を出してもらう。

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1. 大あごでかみつく
2. 毒液(どくえき)をかける
3. 腹(はら)の先の針(はり)でさす

 アリの、種類(しゅるい)によっては、巣(す)や餌場(えさば)をうばいあって、戦うことがあります。相手は、同じアリどうしのこともありますが、違(ちが)う種類のこともあります。どちらかの体が、ちぎれてしまうか、死んでしまうまで戦います。 同じ種類(しゅるい)でも、巣(す)がちがうと、戦(たたか)うことがある。巣の外で、同じ種類のアリが出会った時は、おたがいに触角で、臭いをかいで、仲間(なかま)と他(ほか)の巣のアリを区別(くべつ)する。
毒液
 戦うとき、腹部(ふくぶ)の端(はし)から蟻酸(ぎさん)という、毒液をふきかける。シリアゲアリの仲間(なかま)は、尻(しり)を上げるような格好(かっこう)で、腹(はら)を背中(せなか)へ曲げて上から吹(ふ)きかける。ヤマアリは、腹を体の前に曲げて、下から吹きかける。

 アリは、餌場(えさば)を独占(どくせん)するためや、巣を守るために戦う。餌をぬすみにくるどろぼうとの戦いもある。負けて引っこしをするアリもいる。おたがいに、巣がはなれていたほうが、平和に暮(く)らせるようだ。

 毒液(どくえき)のほかに、大あごでかみついたりする。オオハリアリなどは、腹部の先に針(はり)をもち、これで戦(たたか)う。クロオオアリなどの働(はたら)きアリの中には、大あごの強い兵アリがいる。

一番こわいアリジゴク


 すりばち型の穴(あな)の底にかくれているアリジゴクは、ウスバカゲロウの幼虫だ。アリが足をすべらせて、落ちたら大変。体液を吸いとられて、死がいはポンとすてられてしまう。

ほかの虫にもねらわれる

 ほかの虫やクモもおそろしい敵(てき)だ。つかまったら体液を吸(す)いとられてしまう。寄生(きせい)バエにねらわれ、卵(たまご)を産(う)みつけられると、大変だ。巣(す)のなかの幼虫まで食べられてしまう。


食料を入れておく部屋やごみをすてる部屋もある

 クロナガアリの巣(す)には、たくさんの部屋がある。部屋は、幼虫(ようちゅう)を育てる幼虫室、食料庫、ごみすて場、母アリの部屋と、きれいに分かれている。部屋の温度によって、働(はたら)きアリは、幼虫をすごしやすい部屋に移(うつ)してやる。(母アリ=雌アリ=女王アリ)。


土の中や朽木の中に巣を作る

 北海道のような寒い場所では、土の中に巣を作るアリと、切りかぶや、たおれた木の皮の下に巣を作るアリしかすんでいません。関東地方から西南のあたたかい地方に行くと、生きた木の皮の下や枯れ枝(かれえだ)の中に巣を作る種類(しゅるい)も見られます。


空の上で結婚式(けっこんしき)

1. 結婚(けっこん)をする。(夏のはじめ)。


 クロオオアリは、5月20日前後に結婚します。雨上がりでむし暑い、ほとんど風のない時に、空へ飛(とん)で行(い)って結婚をするのです。一番早いクロナガアリは4月の終わりに、キイロシリアゲアリは9月に結婚飛行(けっこんひこう)をします。
結婚飛行(けっこんひこう)の準備(じゅんび)
 結婚飛行が近づくと、巣口(すぐち)ではあわただしく働(はたら)きアリが出入りする。むすこアリ(雄アリ)も頭を出すが、まだ早すぎると、働きアリに足をくわえられて巣にもどされる。

高い場所からとび立つ

 とうとう、おさえきれないようにむすこアリ(雄アリ)が巣口(すぐち)からとび立った。でもお腹の大きなむすめアリ(雌アリ)は、重くてなかなか飛(と)び上がれない。草の茎(くき)などに登り、高い場所から飛び立つ。
2. むすめアリ(雌アリ)は羽(はね)を落す。

 1時間ほどたつと、結婚(けっこん)が終わったむすめアリ(雌アリ)は地上におりて羽を落し、むすめから母親(女王)になるしたくをする。むすこアリ(雄アリ)はやがて死に、アリや小鳥の餌(えさ)になる。

母アリは、最初に産(う)んだ子どもを1匹(ぴき)で育てます。 羽(はね)を落したために、いらなくなった胸(むね)の筋肉(きんにく)が、 だ液(えき)にとけてミルクの役目をします。 ときには後から育っていく卵や幼虫を、餌(えさ)として使うこともあります。 (母アリ=雌アリ)
3. 土にもぐって卵(たまご)を産む。
 母アリは、石や木材の下にもぐって、最初の巣(す)を作る。 自分の体が回転できるくらいの部屋を作ると、入口を土でふさぐ。 そして毎日1粒(つぶ)ぐらいずつ卵を産む。
4. 約25日で幼虫になる。
 卵(たまご)は25日ほどで幼虫になる。 幼虫は、10日くらいたつと自分で糸をはいて、白っぽいまゆを作り始める。 まゆの中で、幼虫は脱皮(だっぴ)してアリの形をした蛹になっていく。
5. 10-15日くらいするとまゆを作る。
6. そして1か月後。働(はたら)きアリが生(う)まれる。

 卵(たまご)が産み落されて60日ほどたつと、最初の働きアリがかえる。 体の色は黒く、栄養がたりなかったため、とても小(ちい)さい。 でも元気に外に出て、餌(えさ)を運んでくる。

 やがてはたらきアリは、10匹(ぴき)ほどに増(ふ)える。 すると母アリは、働きアリに餌(えさ)をもらい、幼虫の世話をしてもらう。 このように、働きアリをつれた母アリを女王アリともいう。(母アリ=女王アリ=雌アリ)

はじめの年は、働きアリが10-20匹(ぴき)で終わります。2年目は、30-100匹ぐらいにふえ、卵(たまご)や幼虫(ようちゅう)を育てます。母アリ(女王アリ)は、働きアリから餌(えさ)をもらい、身のまわりの世話をしてもらって、卵だけを産んでくらします。
働(はたら)きアリが、だんだんふえて部屋を広げてゆく。土をほったり、ほった土を外へすてたりするのも働きアリだ。これらの外の仕事をする役目の、働きアリは、少しやせていて、活発に動き回るアリたちだ。
幼虫や蛹(さなぎ)の世話をする
 少し太った働(はたら)きアリは、巣の中にいて、幼虫や、さなぎの世話をする。 母アリ(女王アリ)の、身のまわりの世話や、卵(たまご)をなめてそうじをするのも、 巣の中にいる働きアリたちの役目だ。


 クロオオアリの巣(す)には、およそ2000匹のアリがいます。クロヤマアリでは、1万匹をこす大きな巣もあります。でもたくさんの部屋に分かれてすんでいるので、汗(あせ)や息(いき)でむっとすることはありません。  1つの巣(す)の仲間(なかま)の中で、いちばん多いのは、働きアリだ。働きアリは巣、をひろげたり、敵(てき)と戦(たたか)ったり、餌(えさ)を運んだり大活やくだ。

 羽(はね)のはえたむすめアリ(雌アリ)は、1つの巣(す)にたくさんいるが、結婚(けっこん)をして羽を落した母アリは、1つの巣に1匹だけだ。1つの巣にいるアリは、すべて兄弟姉妹ということになる。
 むすこアリ(雄アリ)は、年に1度だけあらわれて、巣(す)の中で結婚(けっこん)の日をまっている。結婚が終わると、巣にもどらず死んでしまう。巣の中では、ふだんは見かけない。

冬越し巣
 秋が深くなり、外が寒くなると、アリたちは暖(あたた)かい所をもとめて、巣の深いところにもぐっていきます。草むらのヤスデや、トビムシが、巣の浅(あさ)い所で冬ごもりすることもあります。出口は、自然(しぜん)に土や砂(すな)などで閉じてしまいます。

 土の中にすむアリは、巣の深い所で冬をこす。木の皮の下、草木の中、木の根元のすき間など、寒さのきびしくない所に集まって、冬をこす種類(しゅるい)もある。
 ほとんどの種類(しゅるい)のアリは、冬の間餌(えさ)を食べない。秋に蓄(たくわ)えた脂肪(しぼう)でひと冬をこす。でも、クロナガアリは、秋に草の実をたくさん巣(す)の中の倉庫(そうこ)に蓄えて、冬の間は巣の中でくらす。
4月 巣を開く
5月 結婚飛行(けっこんひこう)
母アリ(雌アリ)が卵(たまご)を産(う)む
6月 幼虫が育つ
8月 働(はたら)きアリが活躍(かつやく)する
11月-3月 冬越(ご)し
 春になり、土の表面が暖(あたた)かくなり、この暖かさが、アリのいる所まで広がっていくと、 アリたちは、急に巣の入口を開けて、外へ出始める。東京では、4月の始めごろ。

アリの種類とアリの特性

近年、地球環境の変化に伴い日本でもクロアリが異常繁殖しています。しかも冬でも、家の中で頻繁にクロアリを見かけるようになりました。
ハチ目、アリ科の昆虫は国内で200種以上といわれています。
大部分は社会生活をし、1匹の女王と多くの職アリ、種類によっては兵アリもいます。
繁殖期には羽のある雌雄が空中で交尾し、雌は地上に降りて羽を落として巣を作り女王となります。巣は多くは土中に掘られ、縦横のトンネルとその間に作られる個室からできています。

アリ類は日本では260種ほどが知られています。アリ類は社会性昆虫であり、雄、兵蟻、職アリ(雌)、女王の階級分化がみられ、コロニーと呼ばれる繁殖集団を形成します。

アリ類による被害

アリは、咬むアリや毒針で刺すアリなど危害を与える種がいます。
その他、アリは6月下旬から9月にかけて羽を持った雄雌(羽アリ)が結婚飛行を行なうため、大量の羽アリが照明などに飛んできます。また、働きアリは餌を求めて屋内に侵入することがあるため、食品類に群がり不快害虫として問題となります。
電気設備の中や隙間に侵入し故障させるといったこともあります。

クロアリ 

アカアリ

アミメアリ

体長2.5mm。体色は褐色から赤褐色,脚はより淡色,腹部は黒褐色。頭部は丸く,前方から見て後側縁は角ばらず,後縁は直線状。眼は半球状に突出する。 頭盾中央に隆起縁をもち,前縁にはにぶい7歯の突起をもつ。大あごのそしゃく縁は先端部に発達した2歯,基方部に小さな2歯の合計 4歯を備える。触角柄節は長く頭部後縁を越える。胸部は前後に圧縮されて短く,前胸背は側方から見て直線状,背方から見て前縁は縁をつくる。中胸背,前伸 腹節背面も直線状。前伸腹節刺は針状で長く,先端は鋭く尖る。また側方から見て,刺の先端は前伸腹節の後端を越え,腹柄節の中程の位置に達する。腹柄節は 側方から見て,前縁から後縁にかけて山型になる。腹柄節下部突起はない。頭部と胸部は荒い網目模様をもち,腹部は平滑でやや光沢をもつ。
本種は雌アリ(女王)をもたず,働きアリが産卵して働きアリを生産することで巣が維持される(Mizutani,1980;水谷,1984;Itow et al.,1984)。また働きアリは巣中に留まって産卵する個体と,巣外に出て働き,産卵しない個体が存在し,巣中に留まる個体はやがて巣外に出て働くよ うになる(Mizutani,1980;水谷,1984;辻,1988;Tsuji,1988a,1990a)。まれに,頭部がやや大型で単眼を持つ個体 (職型雌)を多く含んだコロニーが見られる(Itow et al.,1984)。雄アリは初夏のころに見られる。大きなコロニーは数万から数十万の働きアリからなり,定住する巣を作らず,石下や倒木に野営の巣をつ くり,頻繁に移住しつつ生活する(Mizutani,1982;水谷,1984;Tsuji,1988b)。そのためにしばしば道路脇などに本種の長いア リ道が見られる。その他にも生態や行動などについていくつかの研究がある(森下,1939;Tsuji & It^o,1986;Tsuji,1990b)。
本種は日本からは当初 Forel(1900)によって Pristomyrmex japonicus として記載されたが,後に Viehmeyer(1922)によって P. pungens のシノニムと見なされた。東南アジアに広く分布し,日本ではごく普通に見られるが,それ以外の地域ではさほど多くない。

北海道南部,本州,四国,九州,対馬,南西諸島;中国,朝鮮半島,台湾,インド東部〜マラッカ

トビイロケアリ

働きアリの体長3.5mm前後の中型のアリです。体色は黒褐色で、いわゆる「クロアリ」に見えます。日本全国に分布します。
アブラムシが出す甘い汁(甘露)を好むため、アブラムシがが発生している植物の上で徘徊しているのが見られます。巣は土中や朽木、植木鉢の下などに作りま す。また、腐朽した木材に営巣することがあるので、時に風呂場や台所などに生息することがあります。

イエヒメアリ

イエヒメアリ
家屋害虫として最も有名なアリです。働きアリは体長2〜2.5 mmの小型種で、体色は黄色から赤褐色をしています。
暖かいところを好み、
熱帯では一年中 野外での生息がみられますが、温帯以北では、冬季には暖かい保温性の高いマンションなど鉄筋コンクリート造の建物によく発生します。 特に、壁紙やタンスの裏などのちょっとした隙間に営巣し、次々と分巣し、繁殖力が大きいアリです。巣を発見するのは容易ではありません。
●ヒメアリ ‐Monomorium intrudens
ヒメアリの姿や(名前も少し)イエヒメアリに似ていますが、種類は異なります。
主に枯れ草や朽木の中、家の周辺、羽目板などに営巣し生息します。餌を求めて、わずかな隙間から屋内に侵入して、食品(砂糖や菓子類・乾肉など)に集まることがあります。人を咬むことあります。


体長2-2.5mm.体色は黄色から赤褐色の単色性.複眼は20個前後の個眼よりなる.大あごは4本の歯をもつ.頭盾の1対の縦走隆起線は明瞭.後胸溝は 顕著で,前伸腹節後背部は多少角ばる.前伸腹節背面には立毛を欠く.腹柄節腹縁はほとんど湾曲しない.頭部から腹柄節にかけて体表面にはこまかな点刻が密 にあり,光沢はない.
汎世界的に分布し家屋害虫として有名で,本州の諸都市,例えば大阪には昭和の初期に侵入してきたとされる(寺西,1930).少なくとも九州以北では野外からの記録はない.南西諸島,とくに先島諸島では野外の草地などにも見られる
クロオオアリ
体長7〜12mm。体色は黒色で,頭部は光沢をもたない。側方から見て前・中胸背縁は緩やかな弧をえがく。前伸腹節背縁はカラフトクロオオアリとくらべて より丸みを帯び,後縁の傾斜はより緩やかである。腹節第2背板の軟毛は4〜8列に並び,次の列の軟毛に少し重なる。軟毛の長さは隣の軟毛との平均距離の 3〜5倍である。前・中胸背面には少数の立毛がある。
開けた場所の地中に営巣し,巣口は地表に直接開ける。羽アリの飛出は5〜6月(安部,1973)。染色体数は2n=26(Imai & Kubota, 1972)。アリヅカムシの1種Tmesiphorus princeps が巣にいる場合がある(澤田,1974)。各地に普通。

北海道,本州,四国,九州,対馬,屋久島,トカラ列島(中之島);中国,朝鮮半島
アルゼンチンアリ

その名の通り南米原産のアリですが、人間の移動に付帯して分布を拡大しています。
働きアリは体長2.5mm、体色は黒褐色(コーヒー色)をしています。日本では広島や兵庫県、山口県、愛知県、岐阜県、大阪府など各地で生息が確認されています。

アルゼンチンアリは、女王が巣外へ結婚飛行を行わないため、1つのコロニーに多数の女王が存在します。そのため、繁殖率は相当なものと推測できます。
また、本種は農業害虫であると共に、在来のアリや他の生き物(昆虫等)を駆逐してしまうといった生態系の撹乱も引き起こす恐れのあるアリです。
見分け方
体色  茶色 
体長  2.5〜3mm
体型  スマート
特徴  高速でせわしなく行動する

南アメリカ(アルゼンチン北部、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル南部)が原産地とされるが、現在アメリカ合衆国内ではフロリダ半島を中心とする合衆国本土南東部とカリフォルニア州を中心とする地域、オセアニアにおいてはニュージーランド、イースター島、オーストラリア、ハワイなどほぼ全域で、その他ヨーロッパ、南アフリカで生息が確認されている。

アジアでは記録がなかったが、1993年に日本の広島県廿日市市で初めて採集され、広島市、大竹市、呉市、府中町、山口県岩国市といった周辺地域での定着も確認された。その後兵庫県神戸市のポートアイランド、愛知県田原市、岐阜県各務原市、神奈川県横浜市でも生息が確認されている。

特性

働きアリの体長は約2.5 mm、体高は1.6mm程度で、女王アリは通常その2-4倍程度の大きさ(ただし他のアリと比較して長い触角と足の影響で実際はより大きく見える。)である。体色は遠目には黒く見えるが、近寄ると褐色であることがわかる。他種に比較して脚と触角が長く、それらを振り回してせわしなく動き回る。人目につくときにはたいてい多数の個体からなる行列をなしているのも特徴の一つである。1匹だとそれほどでもないが、多数群れているときにそのうちの1匹潰すと黴くさい臭いがする。

攻撃性が強く、他種のアリの巣を見つけるとこれを襲って、その巣の成虫幼虫含めまるごとエサにする。ゆえに、本種の蔓延した地域から在来種のアリは一匹残らず姿を消し絶滅に追いやられる。アリだけでなく、ハチの巣や天敵であるはずの鳥の巣まで襲ってヒナを殺戮する。

またよく人家にも侵入し、その場合は人間や家畜が攻撃の対象となる。武器は大顎で、これでもって噛み付く。カタアリ亜科のアリはハリアリ亜科やフタフシアリ亜科のアリのように毒針は持っていないので刺すことはなく、またヤマアリ亜科のアリのように蟻酸を含んだ毒液で攻撃することもないので、噛み付かれても他のアリやハチに攻撃されたときのような症状は起きない。

多女王性であり、一つの巣に複数の女王アリがいる。その割合は、ふつうは働きアリ1,000匹に対して女王アリ8匹程度であるが、後述する超巨大コロニーともなると1,000,000匹以上の働きアリを抱え、女王アリの数は1,000匹以上になる。

行動スピードはとても速く、日本在来種のアリの4倍近いスピードで動ける。気温の一定な市街地を好み、山間部での活動は確認されていない。(NHKの放送より)

生態

女王アリは一日に約60卵程度を産み、約2ヶ月で成虫の働きアリとなる。働きアリの寿命は約1年で、気温が5-35℃のときに活動し、低温になる冬季は活動が鈍る。女王アリも20℃以下では産卵しなくなる。

原産地南米の気候に適応しており、雨季に巣が水没し全滅するのを免れるため、頻繁に女王アリを伴い分巣する性質がある。本種は多女王性なので、数頭の女王アリが巣から失われても元の巣が消えることはない。またもとの巣自体からも頻繁にコロニーが引っ越す。他種によく見られる結婚飛行は行わず、女王とオスとは巣の中で交尾する。

土中に巣をつくる場合、深さは20cm程度であり非常に浅い。しかし本種が土中に営巣するのは稀で、それより人工建造物の地上から 150cm 以下の場所にある隙間や壁の割れ目に好んで侵入しそこに営巣する。本種は外皮が柔らかいので約1mmの隙間もかろうじて通り抜けることができ、ゆえに木材 の割れ目やコンクリートのヒビのような、非常に狭い隙間にも営巣することができる。車のトランクや、ちょっと置いておいただけのヘルメットの中にすら営巣した例がある。

さらに侵入地域における本種は、個体間の遺伝的多様性に 乏しく均一に近いので、異なる巣に属するアリであっても互いに攻撃したり争ったりしないことが知られている。通常は別の巣から来たアリは寄ってたかって袋 叩きにされ殺される運命なのだが、本種が侵入した地域では、ある巣に属するアリが他の巣に侵入しても、そのアリは攻撃もしくは排除されることなく、その巣 の一員に納まることができる。こういった性質があるため、侵入地域では本種の巣が一定の間隔を置いて連続する場合、それらの巣は同じ集団(コロニー)に属 する群れのようにふるまう超巨大コロニーとなる。本種が侵入したヨーロッパやオーストラリアにおいては、その直径が100kmを越す超巨大コロニーが発見されたといった、信じがたい報告がある。

しかし、原産地である南米においては、巣間や地理的に隔離された地域間にもともと遺伝的多様性が生じているので、異なる巣に属するコロニーの間で互 いに闘争して排除しあうため、侵入先におけるような超巨大コロニーは形成できない。よって原産地では他種のアリを駆逐することもなく共存している。

侵入した経緯

人間や物資の移動に伴い分布を拡大していったと考えられている。日本においては、最初に発見された広島県廿日市市には輸入木材の受け入れ港があり、 その周辺から広がっていったことが確認されているので、輸入木材の中に巣食っていた一群が分巣して上陸した可能性が非常に高いとされている。

生態系に与える影響

本種は体つきこそ小さいが攻撃性が強く、繁殖力も旺盛なので、数にものを言わせて侵入地域における土着のアリほぼ全種を駆逐根絶することで知られ る。本種に侵入されたアフリカのある地域では、この性質により土着のアリに生活環を依存していた特殊な植物が絶滅の危機に追いやられ、カリフォルニアでは 主に土着のアリを捕食していたトカゲの1種の個体数が著しく減少した例が知られている。

また他の多くのアリ同様、甘味が大好物でアブラムシやカイガラムシといった吸汁性のカメムシ目昆虫を、その排泄物(甘露)を目的に保護する性質がある。これら吸汁性昆虫は多くが農業害虫であり、そうでなくても植物を弱らせたり伝染病をうつすので植物の勢いが弱まり、農作物の場合は当然のように収量が減少する。また本種自体も甘い実をつける果樹などを食害する。

侵略アリとしての生態系への被害
 

 アルゼンチンアリは、本来の生息地以外の場所へ侵入・定着し、物資 や人の移動に便乗して分布を拡大する放浪アリと呼ばれる種類のアリです。その中でも、侵入・定着した地域で、在来のアリを攻撃して駆逐するため、特に侵略 アリと呼ばれています。侵略アリが侵入・定着した地域では、それまで微妙なバランスの上に成り立っていたその地域の生態系がダメージを受けるため、様々な 生物への影響が心配されます。
 アルゼンチンアリの侵入による影響については、世界各国から様々な例が報告されています。フランスのある地方では、在来のアリは全て一掃され、アメリカ のカリフォルニア州では、それまで27種類いた在来のアリのうち16種類が駆逐されています。アリ以外の生物の例としては、在来のアリを主食とするコース トツノトカゲの個体数が著しく減っている例(アメリカ)や在来のアリに種子散布を依存している植物が他の植物に置き換わっている例(南アフリカ)などが報 告されています。


農業害虫としての被害

 アルゼンチンアリは、アブラムシやカイガラムシなどの農業害虫と共 生関係(異なる生物が、互いに緊密な関係を保ちながら生活する関係)を持っています。アブラムシやカイガラムシは、甘い蜜を分泌しており、アルゼンチンア リはこれを非常に好みます。アルゼンチンアリは、甘い蜜をもらう代わりにアブラムシやカイガラムシを外敵から保護するため、これらの個体数を増加させま す。結果として、アブラムシやカイガラムシによる農作物への被害が、アルゼンチンアリによって助長されていることになります。ただ、このような共生関係 は、アルゼンチンアリに限った話ではなく、他の種類のアリとアブラムシやカイガラムシの間でも見られるようです。
 その他、アルゼンチンアリ自身が、果物、柑橘類、トウモロコシなどの農作物へ直接被害を与えることもあります。

不快害虫としての被害

 アルゼンチンアリは、人手の 入った場所を営巣場所として好む事に加え、他のアリが通ることのできないほどの狭い隙間でも巧みに通り抜ける習性があるため、しばしば屋内に侵入してきま す。屋内に侵入したアルゼンチンアリは、台所などに置いてある食べ物にたかるため、人に対して不快感・恐怖感を与えます。その他、就寝中に、体中をはいず り回ったり、咬んだりするため、十分に眠れないなどの被害も報告されています。地域によっては大量のアルゼンチンアリが、連日、屋内に侵入してくるため、 日常生活もままならないほど深刻な生活被害を引き起こしています。